水の刃




今上を討ちたてまつる夢ひとつ六月の蚊の羽音が破る


路上には歌、歌こそは狭量のわれを引き裂く水の刃ぞ


何残し愛の形見とするべきや風立ちて玻璃ふるふ裏道


どのやうな国か知らねど「ドミニカ」の響きを抱きて歩む少女よ


愛ゆゑに崩るる愛か紫陽花を机に咲かせ妹ねむる


梅雨空に紫陽花の結びゆく玉の国体の無き右派のざわざわ


物ひさぐ悲しみ満ちて花枯るる道端に水わづかかがよふ


流れ込む虚空を孕み水無月を取り残されて靡く雄鯉よ


黄金を人肉もちて量ること楽しからむや暗がりに著莪


ここからは雨、わが後に頭を垂れし一群つづき短夜終はる


歌いづれ滅ぶと思ふ暁光の赤かぎりなく吾を沈めぬ


チャーリーズエンジェルたちが吹き飛ばす昭和地獄のゴールデン街


不幸、雫のごと滴るも必須にてカサブランカを潜りゆく虫


倫敦の夏を囁くメールにてローマ字書きの日本語あはれ


王侯はつねに刃と睨みあふ されば静かに喉焼く酒を


砂時計われに預けて微笑みし少女の顔の思ひ出せざる


満月も夜明けに溶けて敗走をするにも欲しきこころざしかな


黙れ いま王弟の葬列が粗末に過ぎてゆく 海開き


青嵐吹きて散りゆく朝露の母さん、革命が起きたんだ