海から帰る
酸漿(ほほづき)の一輪白くうつむけるままに優しく知る海開き
寝床にて聴く蝉たちの一声の下に縛りを増すのが国、か
妹に起こさるる朝立つものを慌て隠すも夏の発端
妹の水着はいつも濡れてゐて炎天に渡りゆく潮溜り
濡れやまぬ物として国、静かなり。濡れながら硬直を進めつ
海ゆ戻れば居間には闇が両膝をかかへて座せり、まるで日本だ
夕暮れの厨(くりや)に浮ける妹の白シャツ、はつか乳首を透かせ
妹よ、海より帰る僕たちを夕立ちの包みたりし夏を
「海から帰る」 初出:『文藝春秋』九月号、文藝春秋、2004
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