冬の暦学

 

小春日や砂場に沈む美少年

若くして元帥 冬の椿ふみ

影落としつつ湯ざめする高踏派

負けながら暦学史読む冬の旅

貴様には言ふことにして寒の雨

寒稽古少年愛さるるばかり

毛皮着て歩く男に神宿る

軍刀にこぼるる笑みや遠き火事

学徒兵なる概念や雪仏

顔見世に殺した顔を見出せり

裏切りを奴に吹きこむ実朝忌

人妻に溺れし友よ葛湯飲む

熊手買ふ夜鷹の一生(ひとよ)聞きながら

この国に散華多くて懐手(ふところで)

事始め祗園に呼ばれ愚痴を聞く

苦しみて少年生きよ水仙花

討ち入りの日の雪隠に籠もりたり

牡蠣食ふて貴様を抱けぬ理由(わけ)ふたつ

見舞はずに遠くまで来て都鳥

狐火の蒼くて君のこころかな




初出:「et・cetera4」 99年4月 back | home